東京高等裁判所 昭和45年(く)100号 決定
少年 H・K(昭二五・三・四生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は本人H・Kの抗告申立書に記載された理由のとおりであつて、本件の審判に当つて自分の意見が十分に聞かれないで特別少年院送致の決定があつたのは著しく不当であるから、刑事処分にして貰いたいというのである。
しかし、少年の保護処分の決定に対する抗告(少年法第三二条)は、本人の利益のためにのみすることができるものであつて、本人の希望する刑事処分は少年法第二四条の保護処分としての特別少年院送致よりも不利益な措置であること法律上明らかであるので、本件抗告はその理由がないばかりでなく、記録によれば本人は家庭の乱脈もあつて非行に陥り昭和四四年七月八日中等少年院を仮退院した後も再び放縦な生活をはじめ、ひつたくり等の本件各窃盗の非行を重ねたものであることが明らかであり、少年院法第二条第四項にいう「犯罪的傾向の進んだ」者に当るものというべく、これを特別少年院に送致する旨決定した原決定を著しく不当であるということはできない。論旨は理由がない。
よつて少年法第三三条第一項後段により本件抗告を棄却することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 遠藤吉彦 判事 青柳文雄 菅間英男)